イベント報告 2024/12/02
バイオサイエンス領域花発生分子遺伝学研究室の山口暢俊准教授が計画班メンバーとして参画している学術変革領域研究(A)「植物気候フィードバック」*1の企画として、11月23日(土曜日)に横浜市立大学みなとみらいサテライトキャンパスで、「香君」*2の著者 上橋菜穂子先生と、京都大学 高林純示名誉教授 をお迎えしてクロストークイベントを開催しました。
イベントには高校生11名も招待し、「植物気候フィードバック」の研究プロジェクトの紹介と"アイシャ"の実演も行いました。
この研究プロジェクトでは、通称PTR-MSと呼ばれるプロトン移動反応質量分析計を、優れた嗅覚を持つ「香君」の主人公にちなんで"アイシャ"と名付けて、植物が発している「香り」(化学物質)を測定しています。このイベントでは、"アイシャ" の実演として、植物の葉を使った化学物質の測定を行いました。
作家で文化人類学者の上橋先生が書かれた、"アイシャ"を主人公とする「香君」は、「植物気候フィードバック」のバイブル的な存在となっています。そして、化学生態学を専門とする農学者の高林先生は、本研究プロジェクトの監督のような存在である領域アドバイザーです。
そんなお二人の出会いや、なぜ「香君」がこの研究プロジェクトのバイブルとなっているのか。お二人のクロストーク、"アイシャ"の実演、高校生からの質疑応答など、イベントの詳細レポートは、後日、学術変革領域研究(A)「植物気候フィードバック」のウェブサイトにて公開される予定です。お楽しみに!
【参考】
*1学術変革領域研究(A)「植物気候フィードバック」
https://www.plant-climate-feedback.com/
植物は、私たちが感じる良い香りや、ちょっと鼻につくような香りを出すことがあります。この香りの正体は、植物が出す香りの成分で「揮発性有機化合物(BVOC)」という物質です。実は、このBVOCが地球の気候を変化させる大きな力を持っています。植物がBVOCを出すのは、自分を守るためだったり、他の植物とコミュニケーションをとるためだったり、様々な理由があります。この研究プロジェクトでは、植物の遺伝子を詳しく調べて、BVOCがどのように作られ、どのように環境に影響を与えるのかを解き明かそうとしています。
学術変革領域研究(A)は、多様な研究者の共創により、従来の学術の枠を超えた新たな研究領域を創出し、日本の学術水準向上や若手研究者の育成に貢献する研究です。
文部科学省のウェブサイト
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/1412385_00006.htm
*2 「香君」(文藝春秋のウェブサイト)
https://books.bunshun.jp/sp/kokun
上橋菜穂子先生が2022年に刊行したファンタジー作品「香君」で、優れた嗅覚によって、「香り」で繋がっている世界を知ることが出来る主人公"アイシャ"が、どのような選択をし、生きていくかを描いた物語です。
(文庫版は全4巻、文春文庫より)