令和6年度学位記授与式を挙行(2025/3/24)

イベント報告 2025/03/28

 令和7年3月24日(月曜日)、ミレニアムホールにて学位記授与式を行い、先端科学技術の将来を担う397名の修了者を送り出しました。
 今回の授与式は、課程ごとに開催する2部制で行われました。
 授与式では、塩﨑学長から博士前期課程の修了生の代表者及び博士後期課程全員に学位記が手渡され、式辞が述べられた後、来賓から祝辞が述べられました。続いて本学支援財団が優秀な学生を表彰する制度であるNAIST最優秀学生賞の受賞者14名に対して、同財団理事長代理として増田専務理事から賞状及び副賞が贈られました。最後に学生による音楽演奏が行われ、修了生の門出を祝しました。
 式典終了後、会場を開放し、多くの修了生が指導教員や在校生も交えて記念撮影を行っていました。

※ 今回の修了生の内訳は、以下のとおりです。

【博士前期課程修了者】

先端科学技術研究科    341名(うち留学生23名) 
 計           341名(うち留学生23名)
【博士後期課程修了者】

情報科学研究科       1名(うち留学生0名) 
先端科学技術研究科     55名(うち留学生24名)
 計            56名(うち留学生24名)
 
総計           397名(うち留学生47名)

【学長式辞】

 まずは先ほど、本学の学位を授与された皆さんに、心からのお祝いを申し上げます。このミレニアムホールに皆さんとこうして集い、学位の取得と新たな門出を共にお祝いできることを大変喜ばしく思います。また、本日ご祝辞を賜ります、本学支援財団理事長・小林哲也様、本学同窓会会長の清川 清先生に深く感謝を申し上げます。

 皆さんのご家族や友人、そして、皆さんを、熱意をもって指導してこられた教員の方々にもお祝いを申し上げたいと思います。加えて、今、このステージ上にいらっしゃる研究科長や領域長をはじめ、様々な形で皆さんの本学での学びをサポートしてくださった教職員にとっても、今日という日は特別な日になります。本日、ここにいらっしゃらない方々も含め、皆さんの奈良先端大での学びを支えてくださった全ての方々に、大きな感謝の拍手を送りましょう。

 さて、皆さんはこれからこの奈良先端大を離れ、社会に踏み出していくわけですが、この機会に今一度、振り返ってもらいたいことがあります。それは本学の「共創コミュニティー宣言」です。できれば読み返し、本学での皆さん自身の学びの体験と照らし合わせてみて欲しいのです。

 一般に日本の大学の大学院は、同じ大学の学部からの内部進学者が多数を占めているのに対し、大学院大学である本学における多様性は際立っています。国内からだけではなく、世界約40の国や地域からの留学生や研究者を受け入れている奈良先端大では、「構成員の様々な考え方や経験が、多角的な視点や多彩な発想の源になる」と共創コミュニティー宣言で述べられているように、先端科学技術分野の教育研究において多様性が一つの強みとなっているのです。

 今、海外では、多様性・包摂性という価値観が大きく揺らいでいる国もあります。本学において、様々なバックグラウンドや知識、視点を持つ学生同士あるいは教員との交わりの中で学びを積み重ね、学位論文研究に取り組み、そして素晴らしい成果をあげて学位を取得された皆さんと、今日、"diversity" そして "inclusion"の価値を改めて確認できればと思います。

 Brian Uzziという米国の社会学者が2007年に科学専門誌サイエンスに発表した大変有名な論文があります。彼の研究グループは、過去50年間に発表された約2,000万報の論文と約200万件の特許を分析し、かつては一人の研究者が単独で行っていた研究や開発が、次第に複数の研究者のチームで行われるようになってきているという大きな変化を見出しました。しかも、単著の論文よりも、複数の著者による論文の方が、より大きなインパクトを生み出していることも明らかにしたのです。

 では、大きなインパクトがある論文とはどのようにして生み出されるのか?Uzzi教授らはその後もさらに研究を進め、様々な科学分野の約1,800万報の論文を分析したところ、多数引用されているインパクトの高い論文には一つの傾向が見られることが分かりました。すなわち、複数の研究者が著者となっており、既存の分野の枠組みを越えた、概念やアイデア、アプローチの新しい組み合わせが含まれているというパターンを発見したのです。

 イノベーションが既存の知識や技術などの新しい組み合わせで生まれるということは、「イノベーション」という概念を最初に提唱した経済学者Joseph Schumpeterが100年以上も前に既に指摘していますが、それをUzzi教授らは大規模解析で改めて証明したと言えるでしょう。加えて、心理学者たちも、均質なメンバー構成のチームと多様なバックグラウンドを持つメンバーから成るチームの課題解決能力を比較するような研究を報告しており、異なった視点を持つメンバーから成るグループが課題解決や価値創造に取り組むことの重要性は、科学的な検証を積み重ねてきています。

 かつて「多様性を選ぶか、超一流になるかどちらかだ」と発言した米国連邦最高裁判所の判事がいました。残念ながら、多様性を追求することは、質の低下につながるという、このような古くからの迷信は、その姿形を変えながら、今も生き残っています。これから本学を離れ、新しい出会いの機会がやってくる皆さんに、英国の哲学者 John Stuart Millの有名な言葉を是非、ご紹介したいと思います。
 「人類の進歩が滞っている現在、私たちが自分とは異質な人々や、馴染みのない考え方、そして行動様式に触れることの価値は、これまでになく高まっている...そのような交流は、これまでも、そしてとりわけ現代においても、発展をもたらす源泉である。」
 皆さんは社会に旅立ち、さまざまな人々と出会います。考え方の違う人、意見の合わない人と仕事をすることもあるでしょう。この奈良先端大での学びと経験を活かして、多様な人たちとチームで取り組み、協力することで、イノベーションや困難な課題の革新的な解決策を生み出し、新たな価値創造を成し遂げる。そんな本学修了生のこれからの活躍を期待し、そして楽しみにしています。

 最後に改めて、修了生の皆さんに心よりのお祝いを申し上げるとともに、卒業後も皆さんは奈良先端大コミュニティーの一員であることをお伝えしたいと思います。本学の同窓会は修了生による世界的なネットワークの場となっていますので、是非、積極的に活用してください。本学が誇る、一万人を超える同窓生に本日、加わった皆さんと、またいつか再会できる機会を楽しみにしています。

2025年3月24日
奈良先端科学技術大学院大学
学長 塩﨑 一裕

【支援財団理事長祝辞】

【R7.3.24 令和6年度学位記授与式 祝辞】

 奈良先端科学技術大学院大学の令和6年度学位記授与式にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。本日、学位記を受けられました皆様、博士前期(後期)課程を修了されましたこと、誠におめでとうございます。また、塩﨑学長をはじめご指導に当たられた教職員の皆様、これまで支えてこられたご家族の皆様に心よりお祝いを申し上げます。

 さて、人生100年時代と言われるようになり、「リカレント教育(学び直し)」に注目が集まるようになっています。社会に出た人が多様なスキルや教養・道徳心を身に着けられるよう行政や企業が環境を整えることで、生涯にわたり活躍できる社会、平和で豊かな社会の実現を目指す政策であります。
 有名な「学問のすゝめ」で教育の重要性を説いた福沢諭吉も、この中で「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。」という言葉を残しています。これは、「立ち止まっていれば世の中に後れをとってしまうが、懸命に歩みを続けていれば誰よりも前進することができる。」という意味で、現状に留まらず常に改善を続ける、挑戦し続けることの大切さを説いているのであります。
 皆様が社会に出られましても、常に研鑽を積み、問題意識を持ち、常識に囚われず、新たな価値観も取り入れながら果敢に挑戦し続けることが、社会を豊かにし、一人ひとりの人生に厚みをもたらすものと思います。昨日と同じことを繰り返していては、社会も人も成長は望めないのであります。

 現代社会は、複雑かつ多様で困難な問題があふれております。しかしながら、皆様がこの大学で蓄積してこられた最先端の知識や創造力、研究力は、きっとこれらの問題を解決に導いてくれるものと思います。その能力に更に磨きを掛けつつ、文学や哲学といった人としての幅を広げる分野にも、大いに触れていただいて、長い人生を豊かに過ごされんことを願っています。
 最後になりましたが、本日ご出席の皆様のご健勝、ご多幸と奈良先端科学技術大学院大学のますますのご発展を祈念して、簡単ではございますがお祝いの言葉といたします。

令和7年3月24日
公益財団法人 奈良先端科学技術大学院大学支援財団
理事長 小林 哲也

【本学同窓会会長祝辞】

 皆様、奈良先端科学技術大学院大学 同窓会 会長の清川と申します。

 本年度の学位記授与式にあたりまして、同窓会を代表しまして、一言ご挨拶を申し上げます。

 本日、奈良先端科学技術大学院大学を修了される皆さん、大変おめでとうございます。ご両親、ご家族の皆様ならびに関係各位の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。

 これまでに、奈良先端大の修了生はのべ12,000名を数えます。多くの先輩方が国内外の大学、研究機関、企業、そしてスタートアップなど様々な立場で活躍しており、奈良先端大のブランド価値を高め続けています。皆さんが社会に出た後に、本学で学んだことの意義や、本学との繋がりの大切さを実感する機会が必ずあることでしょう。そして、その価値は時を経るごとに深まっていくものです。

 奈良先端科学技術大学院大学 同窓会では、修了生や在学生を支援する事業を展開しています。ホームカミングデーの開催、キャリア形成支援イベントの開催、同窓会集会の経済援助など、様々なプログラムを充実させてまいりました。ぜひ本学同窓会に御入会いただき、生涯にわたるこの貴重なネットワークを最大限に活用していただければと思います。

 さて、皆さんは入学してから今日までの日々を振り返って、どのような思いが胸に去来するでしょうか。まもなく、社会に羽ばたく覚悟はできているでしょうか。

 現代社会は様々なことが急激に変化していますが、その最たる例は生成AIではないでしょうか。AIの知性が人類を超える、いわゆるシンギュラリティの到来は2045年ごろだと言われていましたが、遥かに前倒しになるかもしれません。昨年は、科学者が何年もかけて解けなかった問題をAIがあっという間に解いてしまった、というニュースがいくつもありました。つい2〜3年前は数十万人単位でプログラマが不足すると言われていましたが、現在では、誰でも話し言葉でAIにプログラムを作らせることができるようになりました。AIが先行研究を調査し、仮説を立て、問題を解き、論文を書く時代が、今まさに来ようとしています。

 そのような時代に、人間である科学者や工学者はどういう力を備えるべきなのでしょうか。私は、特に3つの力が、大切だと考えます。

 1つ目は「課題設定力」です。つまり、「何を研究開発すべきか」という根源的な問いを設定する力です。いくらAIが問題を解けるようになっても、そもそも解く価値のある題材を選ぶことは、人間が行うべきだと思います。そのためには、社会全体や人類の未来に関心を持ち、倫理観と責任感を持って研究開発の社会的影響を考慮することが大切です。奈良先端大での研究を通じて、社会的に意義のある問題を見出し、研究の方向性を見定める力を身につけた皆さんには、必ずできることだと思います。

 2つ目は「批判的思考力」です。AIの結果を鵜呑みにせず、そのプロセスや結論を批判的に検証する力です。自己研鑽を怠らず、高度な専門知識を身につけ、科学技術に対して真摯で誠実な態度を維持してください。そうでなければ、AIをよきパートナーとして使いこなすことなどできません。皆さんは研究活動の中で、仮説を検証し、結果を批判的に解釈するという科学の本質的なプロセスを繰り返してきました。この経験は、AI全盛の時代にこそ、活きてくると思います。

 3つ目は「社会の構成員としての実践力」です。チームを作り、情報を共有し、合意を形成し、輪を広げ、研究成果を実装し、社会に還元していく。社会活動は人間にしかできません。皆さんは、全世界から優秀な学生や研究者が集まり、活発な議論と交流が行われている奈良先端大で、他人と調整しながら物ごとを進めていく能力を培ってきました。科学技術は人のため、社会のためにあります。そのことを忘れず、皆さんにはぜひ多くの人を巻き込んで社会を牽引していく立場に立っていただきたいと思います。

 現代社会は、AI技術の急速な発展に加え、持続可能性への挑戦、少子高齢化、エネルギー問題、国際情勢の複雑化など、前例のない課題に直面しています。ぜひ、人間にしかできない価値を発揮して、大活躍してください。

 奈良先端大での経験と絆を大切にしながら、それぞれの道で輝かしい未来を切り拓いていかれることを心から願っています。

 本日は、修了誠におめでとうございます。

令和7年3月24日
奈良先端科学技術大学院大学同窓会
会長 清川 清

式辞を述べる塩﨑学長
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学位記を受け取る修了生
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NAIST最優秀学生賞の授与
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課外活動団体NAIST Music Clubによる演奏の様子
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