ソフトウェア開発の「常識破り」を発見する分析ソフトウェアを日本ユニシスと共同開発 ~奈良先端大のソフトウェア工学の知見と日本ユニシスのビジネスデータでのノウハウとソフトウェア資産を合体、ソフトウェア開発やビジネスの大幅改善に効果のあるソフトウェアをそれぞれ実現~

2008/04/08

【概要】
 ソフトウェア開発中に収集されるデータ(エンピリカルデータ)には、開発効率、意思決定の記録など改善のヒントとなる傾向が含まれてい る。奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 ソフトウェア工学講座 助教 森崎 修司らの研究グループは、その傾向を分析するソフトウェア「NEEDLE」を日本ユニシス株式会社と共同開発した。「NEEDLE」はこれまで発見が難し かった、多くのデータにあてはまる常識ルールと、似通ってはいるが、結果は大きく異なる例外ルールが対になった量的例外ルールを発見することに初めて成功 したのが大きな特徴。品質や開発生産性や予定/実績差等、着目する点を指定することによりこれまで膨大な数のルールが抽出されていた常識ルールと例外ルー ルを絞り込み、分析対象として現実的な数の常識ルールと例外ルールを抽出できるようになった。「常識破り」の傾向をいち早く見つけることで、さまざまな角 度からエンピリカルデータを分析することができ、開発プロセスの大幅な改善による開発効率の向上、的確な意思決定の判断材料を提供することになる。
 日本ユニシスではNEEDLE開発で得られたソフトウェアの一部や得られた知見を還元することにより、同社のビジネスデータ向けデータマイニング・ソリューションMiningPro21® ver.4に同等の機能を追加し販売開始する。

【背景】
  短期間化、複雑化が進むソフトウェア開発において、数値データ(エンピリカルデータ)の分析によるプロジェクトの運営やプロセス改善はかかせないものと なっており、エンピリカルデータからの傾向分析の必要性は高まるばかりである。奈良先端科学技術大学院大学ソフトウェア工学講座では、そのような必要性に こたえるために様々な傾向分析手法の研究をすすめてきた。今回、日本ユニシスと共同開発したソフトウェアNEEDLEはそのような傾向分析手法の研究テー マの1つを具現化したものである。
 図1に示すように、奈良先端大ソフトウェア工学講座森崎らの研究グループはエンピリカルデータ分析に必要な要 件定義とエンピリカルデータを利用した調整、検証した。日本ユニシスはソフトウェアの設計、実現を手がけ、ビジネスユーザに向けた調整、検証を行った。ま た、本学は共同開発で得られたソフトウェアをもとに、商用開発で収集された複数のエンピリカルデータを利用し調整、検証を続け、分析ソフトウェア 「NEEDLE」をパッケージ化した。日本ユニシスは共同開発で得られたソフトウェアをもとに、同社のビジネスデータ向けに調整、検証した上でデータマイ ニング・ソリューションMiningPro21® ver.4への機能追加という形でパッケージ化される。

【データ分析例】
 今 回共同開発したNEEDLEはエンピリカルデータに含まれる傾向をルール(A⇒B: AならばB)の形式で抽出する。NEEDLEは、傾向分析手法として量的ルール、例外ルール、量的例外ルールを抽出する機能をはじめとして、エンピリカル データの傾向分析に適した機能を持つ。
以下はソフトウェアのバグ管理に使われるバグ管理票からルールを抽出したものである。既存の方法でも「量的 常識ルール」や「量的関連ルール」をみつけることは可能であったが、これらに類似しているが、結論が大きく異なる「量的例外ルール」をみつけるのは難し かった。NEEDLEはこれら3種類のルールをあわせて分析者に提示することにより、有用な例外ルールを発見しやすくしている。

 量的常識ルール:(設計段階でみつかったバグ)⇒(修正時間 平均 3.5時間)
 量的関連ルール:(「他社システム連携」機能のバグ)⇒(修正工数 平均 2.2時間)
 量的例外ルール:(設計段階でみつかった)かつ(「他社システム連携」機能)⇒(修正工数 平均 10時間)

  この例では、設計段階で発見されたバグや「他社システム連携」機能に含まれていたバグの修正工数は小さいが、その2つが重なると修正工数が激増している傾 向があることが示されている。分析者はこの量的例外ルールをもとに、特に「他社システム連携」機能で設計段階のバグの混入を防ぐよう、プロセス改善等の施 策を打てる。


【参考文献】
□ 量的ルール
•Shuji Morisaki, Akito Monden, Tomoko Matsumura, Haruaki Tamada and Ken-ichi Matsumoto, "Defect Data Analysis Based on Extended Association Rule Mining", In Proc. International Workshop on Mining Software Repository, pp. 17-24 (May 2007)
•Shuji Morisaki, Akito Monden, Haruaki Tamada, Tomoko Matsumura and Ken-ichi Matsumoto, "Mining Quantitative Rules in a Software Project Data Set", 情報処理学会論文誌,Vol. 48, No. 8, pp. 2725-2734 (Aug. 2007)
□ 仮説駆動型例外ルール
鈴木 英之進,"共通データからの仮説駆動型例外ルール発見", 人工知能学会誌 Vol.15, No.5, pp. 782-789 (Sep. 2000)

【関連情報】
・株式会社日本ユニシス株式会社の本件に関するニュースリリース(本日付): 本リリース末尾に添付
 http://www.unisys.co.jp/news/NR_080408_miningpro21.html

・MiningPro21® http://www.unisys.co.jp/mp21/

【本プレスリリースに関する問合せ先】
 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 ソフトウェア工学講座
 森崎 修司
  TEL 0743-72-5312
  FAX 0743-72-5319
  E-mail [email protected]

admin_c89027ca8391b94b8b737512bab9432c_1207629598_.gif

PDFファイル(39.38 KB)

プレスリリース一覧に戻る