バイオサイエンス領域 助教 / 白川 一
NAISTは
研究教育に打ち込むには
十分すぎる環境があると思います。
profile
経歴
- 2008年4月
- 京都大学大学院在学中、日本学術振興会特別研究員(DC2)
- 2009年7月
- 京都大学大学院理学研究科博士課程修了 博士(理学)
- 2010年4月
- 京都大学 特定研究員
- 2012年4月
- 日本学術振興会特別研究員(PD)として京都大学に派遣
- 2015年4月
- 日本学術振興会海外特別研究員としてカナダUniversity of British Columbiaに派遣
- 2017年3月
- 本学バイオサイエンス研究科(2018年4月より先端科学技術研究科バイオサイエンス領域)助教
趣味
散歩、トレイルランニング、空手
01
研究者になった経緯や現在の
研究テーマについて教えてください。
研究者になったきっかけ・本学教員になった経緯
高校生の時の生物の先生の授業が面白く、生物の研究に興味を持ちました。スティーブン・J・グールドの『ダーウィン以来』という本を貸してくださり、知的好奇心を掻き立てられました。その後、大学受験時に、「研究者になるには博士号が必要」だと知って、まず博士号を目標にしました。
京都大学に進学し、西村いくこ先生(現・本学理事)の研究室で博士号を取得しました。私は博士後期課程から参加しましたが、ドクターの学生が7~8人いる非常に活気のある研究室でした。西村いくこ先生は、学生をその気にさせるのが非常にうまく、教授室でのディスカッション後にはやる気120%ぐらいになって、実験室に戻っていました。
その後京都大学・UBC(University of British Columbia, カナダ)でポスドクとして勤務した後、本学の助教として着任しました。研究室の教授である伊藤寿朗先生が京都大学にセミナーに来た際に見た一枚のスライドが非常にインパクトがあり、今でも記憶に残っています。その後、伊藤先生とは、国際会議等でお会いするきっかけがあり、個人的な面識がありました。最終的に、伊藤先生が研究室の助教を探しているタイミングに、直接声をかけていただき、それがきっかけで本学に応募しました。
現在の研究内容
現在は、植物が作る特殊な細胞に興味をもっていて、具体的にはアブラナ目植物のミロシン細胞の研究をしています。広く細胞分化に興味を持ちながら、分子遺伝学・イメージング・ケミカルバイオロジーなどの手法を用いて研究を行っています。
最近は、植物しか合成できない特化代謝産物にも興味をもっており、多角的な研究を行うために、他の大学の先生達と科学研究費助成事業(科研費)学術変革領域研究(B)「天然物生物学」を立ち上げました(2024年4月開始)。特殊な細胞や特化代謝産物を作ることで、植物が厳しい環境でも生き残り、しなやかに生きていく仕組みを知りたいです。
02
本学の教育研究に対するサポート体制の
印象について教えてください。
本学の教育研究に対するサポート体制のよいところ
本学は実験用の共通機器について、非常に恵まれた環境にあると思います。最先端の機器が数多くあり、管理も大学のスタッフが行ってくれ、オンラインで簡単に予約もできます。もちろん、混んでいる時期はありますが、私が過去に所属した大学等と比較すると空いていますし、論文投稿時の追加実験の際にはたくさん使えるよう柔軟に対応していただけます。
次に、研究費の申請書については、複数の支援があります。申請書の予算部分、誤字脱字や体裁が整っているかをチェックしてくれる研究支援部門に加えて、研究計画から研究の意義・独創性にわたって深い部分までコメント、ディスカッションをしてくれる制度があります。名誉教授からのコメント・面談では、「そもそもグラントはこういう構造で書いたほうがよい」という基本的な部分を一から教えてくださいました。また、リサーチアドミニストレーターの方も「白川先生の申請書の『研究の独自性』のところです……『研究の将来性』の部分ですが……」といった研究内容の突っ込んだ部分もしっかり見ていただけるので非常に助かっています。また、学内締切間際まで研究支援部門に親身になって対応してもらっています。
さらに、「上位科研費チャレンジ支援」といった上位の研究費にチャレンジする人のための制度も有効に活用しています。この制度のおかげもあって、2024年4月から科研費学術変革領域研究(B)「天然物生物学」の計画班の代表として参画することになりました。キャリアアップセミナー(時間の使い方、スケジューリング、タスク管理等)も定期的に開催されており、興味があるテーマの時に参加しています。他にもオープンアクセス支援や奈良先端科学技術大学院大学支援財団のグラントなど、本学は、若手の研究者が段階的にスキルアップするための支援が非常に多いと感じています。総合的にみて、本学は「研究者目線を大切にしてくれる大学院大学」だと思います。「私たち研究者がこうしてもらえるとやりやすいのです」という視点で色々なお願いを叶えてくれる大学院大学です。
03
周囲の学生や教員の様子について
教えてください。
本学の学生や教員の印象
所属している研究室は、全体的にふわっとしていて優しい雰囲気だと思います。「緩い」というわけではなく、個人にある程度の責任が与えられていて、それをちゃんと果たした上で、もっと研究したい人はたくさん研究して成果を出して、学生生活を楽しみたい人は研究活動とのバランスをとってやっている、といった印象です。学生も非常に真面目で、お願いしたことを素直にやってくれる印象です。
現在所属している花発生分子遺伝学研究室は、非常に大きな研究室なので、スタッフも学生も各自の役割分担をはっきりさせるところに重点を置いていると思います。例えば、准教授1名と助教2名の3人で、植物管理・機器管理・試薬管理の仕事を分担しています。学生にも分担の仕事を最初に説明して、できるだけみんなが平等かつ快適に研究できるようにしています。役割分担した上で、月に一回程度、教授・准教授・助教のスタッフでミーティングをして、研究室の運営や、研究を進める上でのアドバイス・共同研究の可能性について話をしています。伊藤教授の研究ファーストのスタイルがスタッフから学生まで行き渡っているので、研究に使える時間が多いです。その結果、研究費を順調に獲得しており、好循環が生まれています。
所属している研究室以外で、個人的に非常に助かっているのは、植物系の研究室のスタッフに気軽に相談できる環境です。メールを書かなくても物理的に近いところで研究をしているので、キャンパス内や学内のコンビニ、帰りのバス停等で顔を合わせる機会が多く、ちょっとしたことでもすぐに相談しやすい環境です。簡単な実験材料の提供や、プロトコルの提供などを他研究室と頻繁に行なっており、新しい技術や機械の習得をスピーディにできます。機器トラブル、学生指導、修論・博論の改訂、申請書の執筆、グラント面接の発表練習など困ったときにいつでも相談できます。お互いの人間性を知っているので、秘匿内容の高い発表資料なども安心して見せ合うことができます。また、最近は、少し忙しくてサボり気味ですが、植物系の若手で勉強会を不定期に開催しています。
04
若手研究者へのメッセージをお願いします。
本学に興味をもった学生・研究者の方へ
教育研究に打ち込むには十分すぎる環境が本学にあると思います。
最先端の機器を用いて新しいテクノロジーに挑戦してもいいですし、自分1人でできないことを学内の共同研究として始めることもできます。30歳代までの助教が多く、研究のことに限らず、意見を交換したり、相談しやすい環境だと思います。
他の研究室の教授もフレンドリーで、「白川さん元気にしてる?」「科研費とか申請してるの?チャンスあるんだから、ちゃんと出さなきゃだめだよ!」など色々とアドバイスをくれることも多いです。
特に、植物科学の研究では、世界的にもトップクラスの先生と機器が揃っているので、「ここでいっちょやってみよう」「自分も負けてられないぞ!」といった気持ちで研究に臨めます。同時に、本学に興味がある方は、ぜひ本学に入ってもらって、そのような才能とやる気に溢れたスタッフの先生とタッグを組んで最先端の科学にチャレンジしてもらいたいと思います。本学に興味をお持ちのみなさんは、「所属する研究室の先生の知識や技能を使い倒す」ぐらいの気持ちで研究をしてもらえるとお互いにいい関係が築けると思います。